乳酸トレーニングで疲労か回復か 乳酸閾値からその正体と理論を考える
2018年10月12日NHKのクローズアップ現代で水泳の萩野選手が、
「 乳酸は疲労物質と言う悪者ではなく味方だ」
的なことを言っていました。
乳酸は確かに直接的な疲労物質ではなく、
乳酸を糖新生によってエネルギーに変えることも出来ます。
しかしながら、乳酸を身体に生成、蓄積することは、必ずしも 身体には良いことではありません。
いや、身体にとって完全に悪いことです。
でも、運動エネルギー的には、乳酸をいかに出さないか、
◎疲労物質とは何か
「疲労の原因は乳酸が溜まることだ」
これは長らく、まことしやかにずっと語られてきたことで、 誰もが信じていたはずです。
でも、メカニズム的には直接の疲労物質は「乳酸」 ではありません。
しかし、だからと言って乳酸が良いモノでは無いし、 乳酸は疲労と関わっていることは事実です。
乳酸の生成によって引き起こされる、
・エネルギー(ATP)不足 ・乳酸の副生成物である、リン酸や水素イオン(H+)や活性酸素による影響 ・それで生じるカリウムイオン(K+)とカルシウムイオン(Ca+) のバランスの崩れ
が疲労の原因となっています。
※詳しいメカニズムは難解で、 よく分かっていないと言うのが本当のところなので割愛。
乳酸が疲労物質ではないからと言って、 乳酸が溜まることは良くないことです。
乳酸が血液中や細胞中に大量に出来ると、細胞が 酸性化することでミトコンドリアがガン化します。
※ガン化とは細胞中のミトコンドリアがクエン酸回路を使えず、 乳酸回路しか使えなくなった状態。
◎乳酸を再利用する機能
乳酸は確かにエネルギー源として再利用することが出来ます。
乳酸は糖新生によって、ブドウ糖に戻し、 これをまたエネルギー源とすることが出来るのです。
※糖新生:糖質以外の物質からブドウ糖を生成する機能
ただし、これには必要な栄養素と、 この機能が上手く使えるかに関わってきます。
つまり、 通常は乳酸をブドウ糖に変える糖新生は起こりにくいのです。
乳酸が蓄積するのは、
①栄養素が無くクエン酸回路が回らない時②大量の糖質が投入されて、
クエン酸回路で処理できない時③運動強度の高い時④酸素摂取量の足りない時
この③④ の状態が無酸素運動と言われるキツいトレーニングの状態です。
呼吸がゼェハァするくらい酸素摂取量が足りていない状態です。
(最大酸素摂取量VO2maxを超えると酸素量が足りなくなる)
これを繰り返すことによって、 乳酸を再利用してエネルギーを生み出す機能が活性化されます。
また、最大酸素摂取量をトレーニングによって向上させることも、④の状態まで行かずに乳酸回路の使用を抑制します。
400~800m走や、 長距離走におけるラストスパートなんかはこれを使いますので、 この機能による差が出るのです。
しかし、 生み出されるエネルギーはごく僅かです。
長持ちせず、力尽きるのはこのためです。
◎速筋と遅筋の使い分け
○速筋は瞬発的な無酸素の高強度な運動で力を発揮します。
○遅筋は大きな力は無いが、 持続的な運動を継続する時に有効活用します。
有酸素運動であり、 酸素と栄養素を必要とします。
エネルギー源は糖質と脂質です。
脂質のほうが高エネルギーで長持ちします。
脂質のほうが高エネルギーで長持ちします。
乳酸は速筋によって生み出されますが、 糖新生でブドウ糖に戻して、 遅筋によるミトコンドリアによって再利用されるのです。
だから、 インターバルトレーニングなどの高強度のトレーニングをするとミ トコンドリアが活性化し、乳酸を処理する機能が高まるのです。
運動するためのエネルギーはどの経路で得ているのか?乳酸とクエン酸
◎エネルギー理論を考えた練習法
以上を理論的に考えたのが以下の練習方法です。
①LSD
長い時間(Long)、ゆっくり(Slow)、長い距離( Distance)をかけて運動すると、脂肪燃焼回路( 脂肪を使ったクエン酸回路+電子伝達系) を優位に使うことが出来るようになる。
この他にLSDはゆっくりとした動きの中でフォームの構築や、 末端毛細血管を活性化させる効果もあると言われています。
②ペース走
ある程度の強度になると、 乳酸が急激に生成されるポイントがあります。
これが乳酸閾値( LT値)と言われます。
自分のこのポイントを把握し、そのペースで走り続けることで、LT値を向上させることが出来ます。
つまり、同じペースで走っても乳酸が多く発生しないようになる。
→逆に言うと、 もう少し速く走っても乳酸が急激に上がる点まで行かなくなる 。
(速いペースでも余裕度が生まれる)
マラソンは、 この境目で貯蔵量に限りがある糖質エネルギーではなく、 豊富で持続的な脂質エネルギーをいかに使えるかがカギとなります 。
だから、 このLT値を上げる練習がマラソンの基本となる練習です。
③インターバルトレーニング
先ほどの乳酸を再利用する機能を向上させる練習がこれです。
マラソンではLT値ギリギリで走り続けますが、糖質の乳酸回路と脂質のクエン酸回路の両方を使っています。
なので、後半はいかにこの乳酸をもエネルギーに変えられるかが、粘りの勝負に関わってきます。
また、この追い込んだ練習によって、 ミトコンドリアを活性化させることが出来るので、 エネルギー代謝の能力も向上するわけです。
④アップ、ダウン
実はこれが大切です。
急に心拍数や酸素摂取量、 筋肉を使うことは身体に負担をかけます。
また、そのような状態から急に正常状態へ戻すと、 そのギャップから疲労生成物質が身体に蓄積されてしまうのです。
昔で言う乳酸を流すと言うことですが、 乳酸をゆっくりとブドウ糖に変え再利用するためにも、 ダウンは大切な練習なのです。
◎まとめ
このように、何もこの練習をする意味も知らないで、ただがむしゃらに走るだけではだめです。
乳酸とは身体にとって悪者ですが、それを正しく再利用することでエネルギーにすることができます。
ちゃんと理論を理解して練習することは、レベルアップに大切なことだと思います☆
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