映画『君たちはどう生きるか』の世界観とその意味を考察

2023年09月27日

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事前宣伝無しの小説『君たちはどう生きるか』のテーマを描いた宮崎駿監督のジブリ作品１０年ぶりの新作として話題に。

ディズニーや日本テレビが制作に関与せず制作悪委員会を作らなかった独自の作品。

声優が芸能人で豪華なことでも話題。

◎映画君たちはどう生きるかが話題になった背景と声優

主人公の役の声優は、実写映画『約束のネバーランド』にドン役に出演、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』でも出演している。

牧眞人	山時聡真
眞人の父(ショウイチ)	木村拓哉
夏子	木村佳乃
アオサギ・サギ男	菅田将暉
ヒミ・若き日の久子	あいみょん
キリコ	柴咲コウ
老いたペリカン	小林薫
異世界の殿様・大伯父	火野正平

他にもちょい役として、

インコの王様	國村隼
老婆・あいこ	大竹しのぶ
老婆・いずみ	竹下景子
老婆・うたこ	風吹ジュン
老婆・えりこ	阿川佐和子
ワラワラ	滝沢カレン

更に、主題歌は今人気の米津玄師で『地球儀』

世界観は耳をすませば、設定はハウルの動く城に近い。反戦のメッセージ性も込められている。
※「穏やかで平和で自由な場所」を望んでいる
※殺し合う奪い合う世界に戻るのか

家族の物語でもあり、時空を超える異世界のパラレルワールド的な冒険物語。

宮崎駿監督自身や周りのジブリ関係者を題材にキャラクターを描いている。

◎戦時中とアオサギが描く親子物語

１９４４年、戦争中の東京の火事で母ヒサコを失う、牧眞人。

僕が愛したあの人は誰も知らないとこへ行った

あの日のままの優しい顔で今もどこか遠く

※米津玄師で『地球儀』の歌詞

父と東京を離れ母方の故郷（日本の南の地方）の屋敷へ。

父は戦争の軍事飛行機の製作工場の社長。

新しい母と新たな子ども。

眞人は実母と似ていることと父との親しげな関係に少し嫌悪感を抱く。

屋敷に行くと一羽のアオサギ
アオサギは南国の鳥であり、鳥が家の中に入ると不吉なことが起こる前触れでもある。

ジブリっぽい背景描写と人物像に音楽が心地よい

家の前にな大きな池とアオサギ

追いかけた先には古びれた昔の屋敷が

再婚相手の母の父が立てた塔

転向した学校で早々にイジメられ、自分で石を頭にぶつけ怪我を。

父に心配されたかったのか、新たな母と父への当てつけか、もう学校に行きたくなかったのか。

嘘までつき、自分には悪意があると実感する。

「大きな苦しみを感じるのは、自分が正しい道を進んでいるから」
※小説『僕たちはどう生きるか』のメッセージ

◎アオサギから導かれる廃墟の塔への世界

寝てるとあのアオサギが助けてと喋った。

眞人はあまり驚かない、冷静な性格。

アオサギが母に会わせると。

母が死んだのを遺体を見ていないだろう。

人間はいつもそうやって騙される。

アオサギと戦うため、ナイフと弓で武器を作る。

家で母からの残しものである本を見つける。

タイトルは小説の本『君たちはどう生きるか』by 吉野源三郎

これを読んで、感情が揺さぶられ並みだし、心が変わる。

自分は悪意で夏子の気持ちを態度や頭の石で付けた傷で困らせていた。

義理の母が森の中へ行くのを思い出し、助けようと決心し追いかける。

行くと塔の正面入口に明かりがつく

塔の中は本だらけの屋敷。

アオサギに案内され、実母が寝ているが偽物

サギとの戦いに勝ち案内される

下の世界へ沈み込む

ついて来た老婆のキリコはその場から逃げ出す。

「我を学ぶものは死す」

という金の門があり奥には大きな石の墓が

ここにある石は「悪意」の固まりであり、悪意をもったものは死んだも同然だと暗示している。

そして、ペリカンの群れがそれを押し寄せてくる。

助けられた女の人(キリコ)の船で着くとと港の家へ

途中で沢山いる船や透明な人型は、現代の戦争で死んだ人たち。

下の世界は死の世界か。

白い子たち「ワラワラ」に魚の内臓を食べさせ、天へと舞う

螺旋の形となり、遺伝子を意味し上の世界への生まれ変わり、新たな命と描写されている

それを邪魔しようとするペリカンたち。

わらわらを襲うペリカンが。
ペリカンは戦時中の兵士の描写のようだ。

さらには組織や群衆に飲まれた現代庶民のようだ。

「俺たちはこの地獄から出ることができない。
ここから出ようと高く飛んだこともあったが、結局同じ場所に辿り着くだけだった」

◎インコとペリカンと夏子とヒミが交錯

そして、そのワラワラを襲うペリカンから火を使って助ける少女。

ヒミと言い、家に行くとジャムトーストを食べ、母の味を思い出す。

ヒミはこの世界では、実の母ヒサコの少女時代なのである。

塔は空から落ちてきたと言う。

この塔はいろんな世界にまたがって立っている

つまり、宇宙と地球はどこかで繋がっており、そこに生と死の世界のパラレルワールドが存在する。

インコに捕らわれるが、ギリギリでアオサギに助けられる。

アオサギは詐欺(嘘)ばかりつくが、時に勇敢に救うこともある。

そして、インコの群衆は現代に生きる混沌とした人間の描写のようである。

インコがいる家から、夏子の姉というヒミと火のなかへ。

いくつもの扉の中の一つに、元の世界と繋がる扉が。父がいたが夏子を探しに戻る

産屋の石の墓に夏子が。

中は無数の紙垂れ、結界で守られ雷のような電気が走っていた。

助け出そうとするが追い出されて外に出てしまう。そしてインコたちに捕まる。

産屋は子どもを産むための離れ小屋であり、それを覗いてはならないタブーがあった。

その後、夢の中で塔の主と会う

｢世界は生き物だ｣

それを石でバランスを取って守っている。

この石を血を継ぐ者に後継したい。

だから、アオサギを送り眞人をここへ呼び寄せた。

ヒミが捕まりインコが主との交渉に。

◎地球儀が奏でる宮崎駿監督の伏線とメッセージ

ヒミと共に大叔父の元へ

その途中で、桜や菊など四季の花が同時に咲いている様子がある。

（この下の世界では３日に、現実の世界の１年が過ぎていく描写か）

13個の石のバランス、連携で世界はぎりぎり成り立っている。

戦争は人間の「悪意」を正当化し、行われている争いであり、世界は「悪意のない意志」でうまくバランスを取っているのである。
１３と言う数字は宮崎駿監督が、これまでに作成した作品の数となっている。

「3日に1つ石を積む」と言うのは、約３年に１作品を作ったことを後継したい暗示か。

または、大叔父が1931年に塔へと住み着いて、眞人が来る1944年への積み重ねた13年なのかもしれない。

だから、下の世界の3日は、現実世界の1年に相当し、パラレルワールドの時差があるため、「3日に1個の石を積む」

自分の血を継ぐ者へ後継者として残したかった。

これは宮崎駿監督自身が大叔父であり、このジブリを息子の宮崎吾郎に後を残すメッセージでもあると捉えられる。

インコ大王は大叔父の元で世界を共に作っているが、意思疎通ができず石を適当に組み上げ壊してしまう。

これは馬の合わなかった支え役のダメさを描写しているのかもしれない。

それは現実にある組織のもろさとも同じであり、宮崎駿監督にとってのスタジオジブリなのかもしれない。

ヒミは眞人の実母。

「お前のお母さんになれるなんて」と言い残し、火事で死ぬことを眞人に告げられても戻った。

塔に迷い込んで笑顔で帰ってきた。

夏子はきみこの姉だった。

眞人は「ナツコ母さん」と呼び母親であることを認めた。

キリコは老婆キリコの若い時だった。

そして、アオサギのような友達を見つけることを現実世界に帰るための使命とした。

作品の一部は思い出としてもあるが、形に残るものではない。

でも、その作品や思い出は友達にもなるのだ。

戻っていた世界は、下の世界では約２日間。
現実の世界では８か月ほど経っており、日本では終戦後で父の戦闘機の風防も片付けられていた。

この風防は神風特攻隊として使用した零戦のものかもしれない。

そして、宮崎駿監督の母親は幼少期に結核で無くしており、父親は戦争時期に航空機製作所を設立して、地方へ疎開後小学３年生で東京に帰郷しています。

下の世界はパラレルワールドでもあり、上の世界を作っている下支えでもある。

宇宙的な描写もあり、地球を支えている根源でもある。

「自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いていると考えるか、それとも、自分たちの地球が宇宙の中心にどっかりと坐りこんでいると考えるか、この二つの考え方というものは、実は、天文学ばかりの事ではない。世の中とか、人生とかを考えるときにも、やっぱり、ついてまわることになるのだ。」

※小説『君たちはどう生きるか』の最後のメッセージ

色んなものの見方や過去を知って、現実に戻り「自分はどう生きるか」を考えさせられるヒントを与えてくれる作品である。

人には悪意はあるが、誤りを正すこともできる。

眞人は東京に戻る際に、ポケットに下の世界から拾った石を握っているのだろう。

だから、映画の最後はあの形で終わっている。