映画『国宝』の感想~それは家系や血を争う歌舞伎役者の長い人生の生きざま
2025年07月02日
『国宝』
「歌舞伎」
それは、17世紀、京都で始まった
「女形」
歌舞伎より転じて大衆演劇などにおいて男性俳優が女性を演じること
その2人の女形の壮絶な歌舞伎人生ドラマを描く
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1964年、長崎
『積恋雪関扉』
半次郎、大阪の歌舞伎役者が立花組の宴席に招かれて余興で女形の芸者に見入る
喜久雄15歳
会食などで女形の芸子をやっていた
大阪から、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎が訪れていた
喜久雄の演技と美貌に魅了され、男だと知るとさらに驚く
渡辺謙の演技や表情は終始素晴らしい、引き込まれる
任侠の世界で生きる、いわゆるヤクザの立花組の組長である親父が襲撃に合い目の前で殺される
半次郎が喜久雄をかくまい、助けて、のちに大阪に呼び寄せる
喜久雄は背中に幼馴染の春江と一緒に彫り物をして、抗争相手に復讐をしようとするが、襲撃してあえなく失敗に終わる
喜久雄は大阪で半次郎の一門で弟子入り
浪花座
子供時代の役の黒川想矢が美し過ぎる
「人間国宝」の女形トップである万菊に紹介される
演技を見た喜久雄は、美しい化物と称する
「そのお顔に、自分が喰われちまいますからね」
と万菊に言われる
歌舞伎の舞台映像は、
映画館やからこそ、大画面で臨場感があり、 映像と音声も生で見てるような迫力ある
半次郎のせがれ俊介、役名は半弥と二人で厳しい稽古を続け、共に歌舞伎一門での青春時代を過ごす
7年後。1971年
22歳となった喜久雄は半二郎の正式な部屋子として、東一郎の芸名を与えられる
京都歌舞伎座
成人して2人で舞台で歌舞伎デビュー
『藤娘』『二人道成寺』で一躍スターとなり、芸能関係、夜のお店にも引っ張りだこ
成長して役者が変わって、どっちがどっちか分からんくなる
2人は切磋琢磨しながら、少年時代から共にライバル、好敵手として歌舞伎役者を演じて行く
「見たことない景色」
光が降り注ぐ、花びらが舞う、白い紙吹雪が舞う、
そして、雪が降り注ぐ
「空を見上げる景色」がこの映画の裏テーマ、背景でもある
そんな中、半次郎が交通事故
代役は息子の俊介が当然選べると思っていたが、そうじゃなく父親が選んだのは、家弟子の喜久雄
2人の感情が交錯する
喜久雄は半次郎のもとで、更に厳しい稽古
自分を殴って、覚悟を感じ、覚醒する
舞台前に幕が上がるのを想像すると震える
息子も家子が代役で舞台に上がる覚悟を感じる
「血がほしい」
本音が出る、感情が溢れる
『曽根崎心中』
「ホンモンの役者になりたい」
自分が息子として父の代役に選ばれなかった俊介は、舞台の上で、喜久雄の演技に嫉妬し、負けを認めて現実を知り、劇場から立ち去る
それを見た春江が俊介を追う
劇と舞台裏の2人が重なる
春江と二人で駆け落ちして家を出る
喜久雄の幼馴染で長崎から出てきたが、だんだんと俊介に惹かれていた
途中、女性の登場人物がごっちゃになる
8年後1980年
喜久雄に娘ができる
高校生の時、店で出会った芸者舞子との隠し子
たまにその舞子と子どもと会いに行くが、一緒にいることを許されない関係となる
神社の前で拝む喜久雄に娘が聞くと、「日本一の歌舞伎役者になるために、他のものは何もいらないと約束した」と、思い込むように娘に誓っていた
俊介と春江は帰ってこず、姿は見えないまま、
半次郎は糖尿病が酷くなり芽も見えなくなってきて、家子の喜久雄に三代目花井半次郎の名を譲る
母親は息子ではないことに猛反対するが、、、
襲名式で、舞子と娘が来ていたが、父親を呼ぶ娘に目を合わさず、母は娘を抱いて立ち去る
このシーンは泣ける、がこれはラストの大きな伏線になっていた
家系と言うのは重い
芸能一門の血筋の関係の強さを知る
でも、演技を認められた喜久雄は万菊に、
「ホンマモンの芸は刀や鉄砲より強い」
と、父親の仇を知ってか、震え立たせる
4代目襲名式で、前の2代目半次郎は、3代目半次郎となった喜久雄の目の前で血を吐いて倒れる
倒れた時に「俊ぼう」の名を呼ぶ
やはり、父は実の息子俊介をとてつもなく愛していたことを知る
その様子を横で万菊は見ていた、、、
二年後1982年、俊介、半弥が戻ってきた
万菊は2人に言う
「歌舞伎が憎くてたまらない、それでもやるの、 それでも舞台に立つのが役者」
大物役者の娘の彰子と役を取るために?付き合う
でも、2人は本気になる
スキャンダラスな人生が週刊誌に書かれ、血筋、家系の争い
喜久雄は花井家の母に謝罪しに行くが、帰りに俊介と喧嘩別れして、彰子と立ち去る
1986年
喜久雄は地方で、彰子と車移動で、いわゆる店周り、現場周り、営業巡業
寄席の席に客に魅入られが、男と分かり、入れ墨もバレて、客に気持ち悪い、ニセモンが!言われる
半次郎の血を引く息子俊介は歌舞伎の世界で活躍しているのを見ると、芸者の中でも、こんなに差ができるもんなんやなとビルの屋上で狂ったように踊り食らう
彰子に「どこ見てるの?」と言われ「どこ見てるんだろうな、、、」と我を失う
死ぬシーンかと思った。
一方、俊介は半弥の役で歌舞伎の大きな賞をもらう
そんな中、人間国宝万菊さんに歌舞伎の世界に呼び戻される
迫力ある顔面アップの絵力
映画館の巨大スクリーンであんなデカい顔、凄味があった
1989年
17年振りに、舞台に2人が一緒になり戻ってくる
『二人道成寺』
それを楽しみに待ち望んでいたファンが大勢駆け寄せる
でも、息子俊介も糖尿病で、演技中に倒れ、病院で足が壊死して足を切らないといけないことに
「一本足でやれる役って何があるんやろ?」
喜久雄は俊介の息子を指導するようになる
俊介は喜久雄に相談し、義足になった身体で「もっぺん舞台に立ちたい」
「代役立つで」俊介が、父のやっていた「お初」をやることに
喜久雄はその恋人役で足を支える
『曽根崎心中』
を2人でやる
背景が深いほど、芸と言うのは、 物凄く深くなり見るものを震えさせる
あまりに、演技と映像に感動して泣いた
偏見で、歌舞伎とか演劇というのは、大げさでつまらないな~と思っていたし、序盤も思っていた
でも、演劇、芸能と言うのは歴史を表現する芸術だ
足をさらに負傷して限界でも、舞台を続ける
「最後までやる、当たり前やろ」
本気で死ぬ覚悟でやってる者には、魅せられる
「あんな風に生きられないよな〜」
2人をバカにしていた館主も、演劇を繰り返し見ていてホンモノに感激し、認めるようになっていた
俊介が亡くなり、その後は喜久雄は活躍をつづけ、ついに
人間国宝に、三代目花井半次郎がなる
「ずっと探してる景色がある」
「藤駒という舞妓を覚えてますか?」
「忘れてへんよ」
まさかのインタビューのカメラマンで喜劇の再会
伏線が終盤で繋がる
娘も舞台を見に来ていた。そして、惹き寄せられていた。
「父ちゃん、日本一の歌舞伎役者になったね」
三時間、長いけど、意味のないシーンは無かった
全て伏線が効いてる
『鷺娘』
最後は雪の舞
全ての人生がここに降り注ぐ
父が襲撃された長崎も雪が降っていた
藤駒に誘われた時も、長崎の雪の話をしていた
その時は、思い出したくなかったのだろう
舞台の上から降り注ぐ、雪の演出に
「きれいやな〜」
まさに人生ドラマ、人間ドラマ、人間国宝
最初は歌舞伎って、おもんないな〜って舐めとったけど、 だんだん見入るようになってくる舞台背景が素晴らし過ぎる!
P.S.
エンドロールが、映像も写真も背景もなく、シンプルに俳優の名前だけで、役柄名がないのが残念だった
誰が誰なのか、俳優と顔をよく知ってないと分からない
後でいろいろ確認した
終わり
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